酒米研究会について

酒米研究会について

日本酒づくりには、米、水、酵母、醸造技術が大事だと言われています。特に原材料である“米”を作るためにはいろいろな人が関わっています。広く知られているのは、農家の存在ですが、米の品種改良、種作り、苗作り、収穫した米の品質をチェックして「今年の米はどんなことに注意すべきか」を考える研究など、いろいろな工程が隠されているのです。日本人にもあまり知られていない日本酒づくりの裏側…酒米の世界についてご紹介します。

 
酒米とは?

 

日本において、食用の米はモチモチとした食感で、適度に粘り気があって、甘みのバランスが良い味わいが好まれます。しかし粘り気のある食用米は、日本酒のための米麹をつくりにくいのです。麹菌を振りかけ、一粒一粒ムラがないようしっかりと米の内部まで菌糸をのばし、日本酒づくりに最適な麹になる作業をしますが、その際に粘り気があって粒々とがくっつきベタベタしていると、蔵人が適切な作業をしにくいのです。そこで日本酒醸造専用の米「酒米」が存在します。

詳しくは、「日本酒醸造用の専門米・酒米について」の記事をご覧ください。

 

酒米研究会とは?

 

ワインが毎年のブドウの出来をワインにも反映させ、異なるビンテージの味わいを楽しむのに対して、日本酒は基本的にできるだけ毎年均一な味わいを目指しています。そこで年によって異なる出来の米が届くのに対して、「今年の米は溶けるの?」「割れやすいの?」「水は多くした方がいい?少なくした方がいい?」という科学的分析値をいち早く手に入れ、対応したいのです。

 酒米研究会は1976年に日本酒造組合中央会※からの要請で発足された、唯一の全国にまたがる学術的な酒米専門の研究団体です。かつて日本酒の原料米の分析や酒造適性の調査項目は決められておらず、地域や機関ごとにばらばらだったため、比較検討が困難で、さらに手分けして分析をおこなうこともできませんでした。

 毎年使用される原料米に適切な酒造管理を行う必要があります。そのため原料米の性質を速やかに精査することが急務だったため、酒米研究会は発足の1976年に「全国酒米統一分析」を制定しました。現在、会員は各地の農業技術センターなどの研究機関、大学、酒蔵、酒米生産者を含め270を数えます。

過去に蓄積されたデータを解析し、多様な会員構成を活かして統一分析の結果を情報交換・意見交換することと、育種、栽培法、環境、醸造分野など酒米に関する研究動向を把握することを目的とし、「酒米研究会」「酒米懇談会」と年2回、集まる機会を設けています。

酒米研究会の重要なカテゴリは、育苗、生育、醸造適性です。

 

 ※日本酒造組合中央会・・・酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律に基づき、酒税の保全及び酒類業の取引の安定を図ることを目的として設立しました。また、会員同士の交流や情報交換を促し、酒類業界の発展のために必要な事業を行う国の機関です。さらにその下に、各都道府県の酒造組合が存在(いずれも独立した公益法人)しています。

組合員数1,637(清酒1,358、単式蒸留焼酎267、みりん二種12)2023年12月現在


取材で訪れた酒米研究会「第46回 酒米懇談会」の内容について

 

研究会に所属する会員しか参加できないイベントに、私は取材で行きました。この日は5名の登壇者が、研究成果や普段の企業活動について発表しました。 

① 新潟県醸造試験場 菅原氏

酒の香味に大きく影響を及ぼす酒米の溶解性について、玄人でも初心者でもどんな研究員でも正確に推定する方法を開発中。現段階での研究成果を発表しました。2023年夏は猛暑日が続いた影響か、酒米の品質があまり良くない可能性が高いといいました。特に異常な猛暑になった新潟県の酒米「五百万石」は溶けにくく、溶け始めると急激に溶けるので、日本酒づくりには注意が必要かもしれない、といいました。

 

② 山本製作所(山形県)

山形県にある山本製作所は、農業関連機器 · 精米関連機器 · 環境関連機器を販売する会社。結城氏は、酒米の乾燥の大切さを語りました。「いかに田んぼから品質を落とさず酒造現場に持っていくか」という理念のもと開発された米乾燥機の特性や、水分量のばらつきの抑え方など、乾燥機を購入した人に直接注意点を指導している、という仕事現場の様子を共有してくれました。

 

③ 長野県農業試験場 青木氏

酒米研究会という名前は、実は日本全国に存在します。ここまで全国に広がり大きな団体ではなく、各地域のコミュニティです。長野県にも、2013年に酒蔵が出資して発足された「長野県酒米研究会」という団体があります。青木氏からその成り立ちについて語られました。

そして長野県の酒米新品種「山恵錦(さんけいにしき)」について。「山恵錦」は長野県の農業試験場でただ種を開発するだけでなく、何度も何度も日本酒の製麹に適しているのか繰り返し実験した、という前代未聞の開発方法が採用された優秀な酒米品種。現在も酒蔵と連携して、品種改良を続けています。

 

④ 飯田商事㈱ 河野氏

飯田商事は、日本酒やワインなど酒類食品総合卸売、酒蔵の経営、醸造用原料の販売などを手掛ける会社。子会社に「新中野工業」という醸造用専門精米機メーカーを持ちます。国内外で醸造用専門精米機を販売するほか、日本の数拠点と委託精米を受託しています。

1998年にカリフォルニア州サンフランシスコに子会社「IIDA Sake Rice Inc.」を設立し、精米所を米国最大の穀倉地帯・サクラメントに持つ飯田商事。米国における酒米搗精や醸造所事情、米国産中粒種の特性などについて発表しました。

 

⑤ 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 長田氏

長田氏は、酒米だけでなく米全般の胴割れ(どうわれ)の原因と対策について話しました。

胴割れとは、適期を遅れて収穫したり、登熟(米が出穂後に成熟していくこと)初期に高温にさらされることで、乾燥しすぎて米の内部にヒビが入ることをいいます。「胴割れ」してしまうと、酒造用に精米したら割れてしまうため使用することができません。温暖化が進む現在、胴割れを防ぐことが研究者の急務です。

 

以上、当日語られた内容をかいつまんで話しました。

 

國酒である日本酒のために

 

日本酒をつくるための酒米づくり、酒米開発には、酒蔵や農家だけでなく、日本国の機関、日本全国の研究所や農家が集まった団体などさまざまな人たちが尽力しています。日本酒は名前の通り「日本」を背負った國酒。より安全に、より美味しい製品ができるよう今日も研究をつづける人たちがいます。


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