角打ち、居酒屋、日本酒バー、祭り…日本で日本酒が飲まれるシーンについて

角打ち、居酒屋、日本酒バー、祭り…日本で日本酒が飲まれるシーンについて

▲北海道・札幌の繁華街

 日本に住む人がみんな日本酒をよく飲むわけではありません。特に自宅で日本酒を楽しむ人は少なくなっています。その理由は「アルコール度数が高い」「他のお酒よりよく酔う」という思い込みや、食生活が西洋化したことです。でも、お酒の選択肢が増えた今でも、昔と変わらず私たちの身近に日本酒はあります。人々は気づかないうちに「この時は日本酒を」と決めたり、特定の料理に合わせて日本酒を選んだりしています。

 現代の日本人がどんな場所で日本酒を飲むのか。居酒屋、日本酒バー、角打ち、寿司屋、蕎麦屋、割烹料理店、レストラン、バー、冠婚葬祭などのイベント。ひとつずつ説明していきます。

居酒屋

 

居酒屋には、1000円でおつまみとお酒が楽しめる安い店(千円でベロベロに酔える、という意味で「センベロ」と呼んだりする)から、1人1万円以上の高級店まで、さまざまです。

 しかし、一般的にはカジュアルな雰囲気の飲食店で、日本酒やビール、チューハイ、ハイボール、焼酎など様々なアルコールと多種多様な料理を提供しています。料理は比較的手頃な価格で提供されることが多く、塩辛やポテトサラダなどのおつまみから、刺し身、おにぎりや肉料理や麺料理などのメインディッシュまで幅広いメニューがあります。日本酒は1合(180ml)ごとに徳利に入れられ提供されることが多いです。

 気軽に利用できる社交の場として、友人との集まりや、同僚と「今日飲んで帰らない?」と言って会社帰りに立ち寄ることが一般的です。

 

日本酒バー

 

 日本酒バーは、日本酒に特化した飲食店で、現在人気を集めています。居酒屋が料理もしっかり食べられる場所で酒がわき役であるのに対し、日本酒バーは酒がメインであることが多いです。また店員も日本酒を愛する人が多く、専門知識を持つことがほとんどです。「こんな味わいの酒が好き」「はじめて日本酒を飲みます」と状況や要望を伝えることで、オススメの日本酒を選んでくれるので、初心者にも安心です。

店によりますが、料理とのペアリング体験を提供しているところもあります。日本酒は合わせる料理や飲むグラスで味わいが変化するのが魅力です。そのような楽しみ方のナビゲートをしてくれるのが日本酒バーです。日本酒はグラスに注がれて提供されることが多いです。さまざまな種類を少しずつ飲んで欲しい、という店の想いが込められています。

 専門知識を持つスタッフがお客みんなの要望を聞きながら営業するため、店が狭いことが多いので、1人か2人など少人数で行くのがオススメです。

 

角打ち

▲東京・蒲田駅にある「旭屋」

 角打ちとは、日本特有の飲食スタイルのひとつで、主に酒販店の一角を利用して、購入した酒をその場で立ち飲みすることです。この文化は昔からあり、元々は酒屋が試飲を目的に店内で酒を飲ませたことから始まりました。

立ち飲みスタイルで、低価格のことが多いです。酒販店は周囲の居酒屋など飲食店に酒を卸していることがほとんどなので、フードは簡単なものが多く、しっかり食事する場合は「飲食店へどうぞ」という住み分けをしていることが多いです。気に入った酒をボトルで買って帰ることができるのは酒販店併設の「角打ち」のメリットです。


寿司屋

 

 

日本古来からの寿司と日本酒。非常に相性がよく、日本人にとって馴染みのある組み合わせです。普段はウイスキーを愛する人でも「寿司屋では日本酒を飲む」という人が多いです。

米からつくられる酒なので、もちろん寿司にもピッタリ合います。シャリとネタの旨味と、日本酒の旨味が合わさり、美味しさの相乗効果を生み、贅沢なひと時を演出するでしょう。鮮魚独特の臭みを消してくれる効果も期待できます。

 シャリに含まれる酢(米酢や穀物酢、赤酢など)の種類によって、どんな日本酒が合うかは変わります。寿司屋では寿司がメインなので、日本酒の種類をたくさん置く店は多くありません。寿司屋では、好みや料理とのペアリングなど何も考えずに「辛口の酒をください」という客を多く見ます。私はあまりかっこいいものではないと思います。若い店主が寿司だけでなく、日本酒も勉強をしている店も増えているので、店のスタッフにオススメを聞くのがよいでしょう。

 

蕎麦屋

▲海苔で蕎麦と具材を巻いた「そば巻き」

▲ざるそば(東京・かんだやぶそば)

 蕎麦と日本酒を楽しむのは、江戸時代の粋な「江戸っ子」の文化です。江戸っ子とは、江戸(現在の東京)で生まれ育った人を指しますが、それだけでなく、性格も特徴的です。江戸時代はようやく訪れた日本の平和な時代。商売が盛んになりました。どんどん建物が建設され、人々が集まりました。当時の人々はせっかちで、商売人らしく明るく社交的、コミュニケーションを大切にしました。困難があってもひらめきやユーモアで乗り切る対応力が豊富で、流行りものが好きで、そして火災が多かった時代なのでみんなで地域を守るために、地域を愛し「自分は江戸っ子である」というプライドが高く、頑固者が多かった。

そんな時代に生まれた蕎麦の文化。働く商人や武士などをターゲットとして、食事も取れてお酒も飲める場所として需要を高めました。江戸っ子的にいえば「いっぺんに完結するなんて手っ取り早いじゃないか!」ということです。

 当時は現代のようにそばを作り置きしておくことができなかったため、注文が入ってからそばを打って切り、茹でていました。そばの提供まで時間がかかるため、軽いつまみを食べながら日本酒を飲んで、そばを待っていました。このスタイルを"蕎麦前(そばまえ)"と呼びます。

あっさりとした板わさなどから始めて、だし巻き玉子、炭で炙りながら食べる海苔、天ぷら(天抜き)という順番で食べていました。今でも私は東京の「藪そば」でこの楽しみ方をしています。日本酒は冷酒でも熱燗でもお好みで。

メインの蕎麦は、出汁たっぷりの汁と日本酒が最高に合います。汁と日本酒を交互に楽しむと、あなたも江戸っ子気分を味わえます。

 

 割烹料理店・料亭

 

▲季節の素材を入れた炊き込み土鍋ご飯

「日本料理を食べる時には、日本酒を合わせたい」という日本人も多いです。割烹料理店は、日本料理の伝統的な調理法を守りつつ、季節の食材を使った高品質な料理を提供する高級飲食店です。コース料理が中心で、料理は一品一品丁寧に調理され、繊細な味わいと美しさが特徴です。店内の雰囲気は落ち着いており、席数も少なく、接客も非常に丁寧です。お祝い事や接待、特別なディナーに利用されることが多いです。

 割烹料理店や料亭では、単価が高く、希少な日本酒を置いていることも多いものです。メニューには載せず、お客を選んで出す場合もあります。仲良くなって特別な日本酒をオススメしてもらいましょう。

 レストラン

▲イタリア料理と純米酒の燗酒を合わせる

▲クリームを使った料理と生酛や山廃仕込みの酒はよく合う

日本国内のイタリアン、フレンチ、ベトナム料理など日本食料理以外のレストランでも、最近は日本酒を置く店が増えています。繊細でバランスの良い日本酒の味わいが見直されてきた証拠です。特にソムリエはテイスティング能力が高く、五味(ごみ)と呼ばれる味わいのバランス(甘味、塩味、酸味、苦味、旨味)の内、日本酒は、塩味以外を持っています。他の酒に比べて旨味も量も多いです。だから日本酒を合わせると、より美味しく料理を食べることができます。ワインではなく、あえて日本酒を合わせるというところに意外性やおしゃれさを感じる日本客が多いです。

この20年ほどでさまざまな味わいの日本酒が増えたことに加え、世界各国の料理で日本の調味料やスパイスを使用することが増えたのも理由のひとつでしょう。日本酒と料理とをペアリングしやすくなったのかもしれません。

小料理屋



小料理店は、割烹料理店よりも少しカジュアルながらも、こだわりの料理を提供する小さな飲食店です。主に女性店主が切り盛りすることが多く、アットホームな雰囲気で、料理は旬の食材を活かした手作り感のあるメニューが楽しめます。割烹ほど格式高くはなく、居酒屋ほどカジュアルでもない、中間的な位置づけの店が多いです。日本各地で、小料理屋と日本酒バーの中間のようなスタイルの店が増えています。

 

祭りなどイベント



日本では古くから祭事やお祝いなどで日本酒を飲む習慣があり、祭りの原点である田んぼの神様への豊作祈願や収穫後の感謝の捧げ物として日本酒が用いられていたことが由来とされています。春には日本人にとって生命線ともいえる主食の米がたくさん収穫できますようにと祈りを込めて、秋には収穫できたことへの感謝の意味で祭りをおこないます。だからこの時、神に捧げられ、みんなで飲み交わす酒は日本酒でなくてはならないのです。

 ※詳しくは「日本人と日本酒との関係」を読んでください。

冠婚葬祭




冠婚葬祭の席では、日本酒をはじめとするお酒は欠かせないものです。神道(しんとう)※におけるお供え物としては最適品とされています。故人がお酒を好きだった場合は、お墓参りに行く際に日本酒をお供えするのも一般的です。また日本酒には“清める”という効能(意味)もあると日本人は古くから信じてきました。四十九日※の後、死の穢れを清める意味(死者と生きた人間の世界を分けるというようなニュアンス)でお酒が出されます。これは海外の酒ではいけませんし、焼酎や泡盛でもだめです。

※神道・・・は、日本の古代から続く宗教で、自然や祖先、そして多くの神々(神)を祭る信仰です。神道の特徴は、特定の創始者や聖典を持たない点にあります。その代わり、自然現象や山、川、石など自然界のあらゆるものに神が宿ると考えられています。これを「八百万(やおよろず)の神」と呼び、自然や生活の中に神々が存在するという考え方が根底にあります。

※四十九日・・・日本の仏教において重要な追善法要(ついぜんほうよう)の日です。これは、亡くなった人の死後四十九日目に行われる儀式で、死者の霊がこの世を離れ、次の世界へと進むための準備期間とされています。

 

▲鏡開きのための酒樽(さかだる)

反対に、結婚式でも日本酒は使われることが一般的です。樽の中に日本酒を入れて、上部に板を貼りふたをして、木槌で割ります(割るという言葉は縁起が悪いことを連想するので、開くといいます)。樽のふたは丸くて平らな形から「鏡」と呼ばれており、樽のふたを割って酒を飲むことを「鏡開き」と呼んでいます。樽酒は縁起の良いお酒としてお祝いの席などで振る舞われてきました。大きな酒樽を皆で分け合って飲むことから、「幸せを分かち合う」という意味合いも持ちます。日本酒は“祝い”の意味も持つのです。

※詳しくは「日本人と日本酒との関係」を読んでください。

まとめ

「日本酒は飲みません」という日本人でも、同僚がいつも居酒屋で日本酒を飲んでいる、結婚式には鏡開きをした、など日常生活に深くかかわっているのが日本酒です。日本を訪れて日本酒を飲む時の参考にしてみてください。

 




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