日本酒づくりには無駄がない~捨てるところがない!日本ならではのエコシステム
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日本酒は米を削ってつくります。たとえば精米歩合50%なら、精米機で半分は削って「糠」になるのです。しかし「もったいない」精神の日本人が生み出した日本酒。特に日本人にとって、米は昔から主食であり、「大地の恵みに感謝」して、神様に捧げるほど大切なものです。もちろん日本酒づくりに使わない部分だって捨てるわけではありません。
日本酒に使わない米の部分は、他の目的に活用する
酒米→脱穀→玄米→精米→白米→麹→酛→醪→上槽(搾り)→日本酒
脱穀
米を脱穀すると「もみ殻」が発生します。もみ殻は、野菜や果実を育てる土に混ぜることで排水性や通気性をアップさせるので、田畑の肥料として使われます。
精米
▲全農パールライス株式会社灘工場の酒米専用精米機(食用米と酒米とを工場そのもので分けているのは日本でも唯一)
玄米の外側には、タンパク質、脂肪、無機質などが多く含まれています。これらが必要以上に多いと清酒の味、香り、色に悪い影響を与え、"雑味の多い"酒になってしまうといわれています。そこで日本酒造りでは、玄米の外側を削り取って、磨き上げた白米を用います。
▲左が精米後、右が玄米(兵庫県産山田錦)
米自体が熱を帯びると、乾燥して割れやすくなるため、加熱をできるだけ抑え、ほんの少しずつ削っていきます。たとえば大吟醸など50%以上精米するものは、48時間~60時間、場合によってはそれ以上の時間がかかることもあります。その時削り取られた部分は、米の外側から赤糠(あかぬか)、中糠(なかぬか)、白糠(しろぬか)、特上糠に分けられ、これらは他の食品工業の原料や飼料として利用されます。
▲左から赤糠、中糠、白糠、上白糠
赤糠(あかぬか)
・家畜の飼料 ・米油
中糠(なかぬか)
・家畜の飼料 ・漬け物用糠 ・土づくり ・焼酎 ・調味料
白糠(しろぬか)
・漬け物用糠 ・友禅用のり ・インスタントラーメン ・せんべい ・焼酎 ・調味料
特上糠
・菓子 ・みりん ・食品 ・医薬品
酒粕
▲スーパーマーケットに並ぶ酒粕
日本酒の原料である米や米麹、酵母によって発酵させた「もろみ」を圧搾することで、液体と分離した後に出てくる「搾りかす」が酒粕です。酒粕には、たんぱく質や食物繊維、ビタミンB群などの栄養素が含まれており、美容にもよいとされています。ただしアルコール分が含まれているため、加熱して使う料理や、食材を漬け込むのに使うことが古くから一般的です。
板状の「板粕」、ペースト状の「練り粕」、お酒を搾る際に機械からこぼれ出た「バラ粕」と、形状によって呼び名が変わります。
▲私が作ったかす汁(酒蔵のまかない飯)
酒蔵のまかないでは、よく味噌汁に酒粕を入れる「かす汁」を飲みます。身体があたたまり、食物繊維も豊富なので、健康に良いとされています。また酒粕ができてすぐ料理に使うので、香りもよく、本当に美味しいです。使っている酵母や米、造った酒の設定によって、酒粕の香りや味わいも変わるので、違いを楽しむことができます。
関西地方では、一般家庭でも「かす汁」が人気で、よく作られます。また板状のままアルミホイルの上に置き、炙って食べる人もいます。「子供の頃、おやつとしてよく食べた」という話を聞くことがあります。
▲日本の家庭料理・ホワイトシチューに酒粕を入れるとよりマイルドになって旨味が増す。
「かす汁」は作る人によって分量が違います。多い人だと、味噌1:酒粕1と大量に入れるため、独特の風味やアルコール感が苦手な人も多いでしょう。だから私は、味噌汁にスプーン1杯の酒粕を入れることを友人にすすめています。クラムチャウダーやカレーに入れてもおいしいです。豚肉や牛肉を数時間漬け込んでおくと、肉が柔らかくなるのでオススメです。
▲白鶴酒造が商品として販売している、酒粕を使用した美容パック。お肌がしっとりする、と人気。
▲大吟醸の酒粕。黒くなっているため、通称「黒粕」。香りが華やかな酵母を使用すると、化学変化によって時間が経つと黒くなる。品質に影響はなく、香りが良い証拠だ。
まとめ
日本酒づくりは、米を大切に思う日本人が生み出した、無駄を出さないエコシステムの一例です。精米から発生する糠や酒粕は、肥料や飼料、食品の原料として活用されます。「もったいない」精神が生み出すこの循環は、資源の有効活用と環境保護に寄与しています。日本酒が持つ深い歴史と文化は、現代の持続可能な社会においてもとても参考になり、価値を発揮することでしょう。私たちも日常生活でこの精神を見習い、無駄を減らす努力をしていきたいものです。
この記事を書いてくれた日本酒人
関 友美さん

日本の文化や伝統を世界に伝えるライター。日本酒や和食、伝統文化をテーマにした執筆を得意とし、その文章は多くの読者に日本の魅力を伝えています。資格を活かし、日本酒や発酵食品に関する深い知識を持つ関さんは、その専門性を活かして様々なプロジェクトにも携わっています。審査員としての経験から、日本酒の品質や特徴を深く理解し、その魅力を的確に伝える力にも定評のある日本酒界屈指のライターさんです!
【保有資格】
・唎酒師、日本酒品質鑑定士(SSI認定)
・発酵食品ソムリエ
・シードルマスター(シードルマスター協会認定)
【審査員実績】
・MONACO SAKE AWARD 2024
・全国燗酒コンテスト 2024