日本酒のコンペティションについて
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日本には1200を超える日本酒の醸造所があります。業界としてより高品質な酒を後世に残すために、国内外でたくさんのコンペティションが存在します。酒蔵としては販売促進をおこないながら技術力を向上させるのに重要な役割を果たしています。また消費者としては、より美味しい酒を選択し飲むために役立つのです。
日本酒に関する日本国内と海外で開催されるコンペティションを紹介します。
日本国内の鑑評会・コンペティション
全国新酒鑑評会
主催:独立行政法人 酒類総合研究所(日本酒造組合中央会との共催)
全国規模で開催される唯一の清酒鑑評会であり、日本で最も権威ある日本酒のコンテスト。成績が優秀と認められた出品酒は「入賞酒」に選ばれ、その中でも特に成績が優秀と認められた出品酒だけが「金賞酒」となります。何蔵に金賞を授与する、という決まりはなく、たとえば2023年なら総出品数の約26%が金賞に輝きました。
市販酒のレベルを問うというよりは、鑑評会用の日本酒を製造して、入賞の目安(醸造家たちはそれをダーツの的のようなものだと表現する)の中に入る酒を狙い通りに造れるかどうか、といった製造技術力の腕試しをされる会。
審査員は、酒類総合研究所の研究職員、国税庁鑑定企画官職員又は国税局鑑定官室職員、醸造に関する学識経験のある者、清酒の製造業、販売業又は酒造技術指導に従事している者のなかでもより清酒の官能審査能力(利き酒能力)に優れ、清酒製造技術に詳しい者のみが選ばれ、担当する。
▲広島県にある酒類総合研究所の入り口
主催の「酒類総合研究所」は、財務省所管の独立行政法人で、明治時代に設立された国立醸造試験所を起源とする酒類に関する研究機関。日々全国の酒蔵でつくられる日本酒の品質向上や酒米の品質向上を目指し研究を続けている機関。そのためこの鑑評会の目的は、『その酒造年度に製造された清酒を全国的に調査研究することにより、製造技術と酒質の現状及び動向を明らかにし、もって清酒の品質及び製造技術の向上に資するとともに、国民の清酒に対する認識を高めること』、とされています。
SAKE COMPETITION
主催:SAKE COMPETITION実行委員会
特別協賛:ダイナースクラブ
協賛:日本航空、リーデル
協力:JA全農おかやま、新中野工業株式会社、JAPAN CRAFT SAKE COMPANY CO.,LTD
後援:国税庁、農林水産省、内閣府知的財産戦略推進事務局
運営:株式会社サニーサイドアップ、株式会社はせがわ酒店
「ブランドによらず消費者が本当に美味しい日本酒にもっと巡り会えるよう、新しい基準を示したい」という理念のもとに、2012年から始まったSAKE COMPETITION。そのため、審査対象は市販日本酒のみ。消費者としては、入賞酒を買うことができるのも魅力です。(人気のあまり手に入らないことがほとんどですが…)
審査方法は、銘柄を完全に隠し、日本酒の品質のみで競うことが徹底されています。ブランドや銘柄に左右されることなく、どんなブランドでも1位をとるチャンスがある品評会です。たとえまだ無名の銘柄であっても受賞すれば、酒販店から取引依頼が殺到し、一般消費者からのニーズが高まり一躍人気酒となり、飛躍するチャンスをつかむことができるのです。
それだけ影響力が大きい理由は、審査員も審査される厳密な体制にもあります。審査員は予審を勝ち進み決審へと進んだ酒に関しては、二度目の審査となります。そこで予審で「1」とつけた酒に決審で「2」をつけるなど、同じ酒への評価が異なると審査員本人が減点対象に。官能評価にブレがあり信頼性に欠ける人は、翌年以降審査員から外される、というほど厳しいものです。そのためSAKE COMPETITIONの結果はあらゆる事情に左右されず、純粋に酒質の良し悪しを判断した、非常に信頼性の高いものといえます。
日本全国各地ごとの鑑評会
各地の各国税局単位でも鑑評会がおこなわれています。(札幌国税局、仙台国税局、関東信越国税局、東京国税局、金沢国税局、名古屋国税局、大阪国税局、広島国税局、高松国税局、福岡国税局、熊本国税局、沖縄国税事務所)
このなかでも、仙台国税局がおこなう「東北清酒鑑評会」は、全国新酒鑑評会で金賞を連続受賞するような優れた酒が多く、レベルが高いと言われています。
杜氏組合ごとの鑑評会
杜氏組合(とうじくみあい)は、酒造りの現場で中心的な製造責任者の役割を果たす杜氏(とうじ)たちが所属する組織です。杜氏は日本酒の醸造工程を統括し、その品質を左右する重要な存在です。醸造技術があるだけでなく、部下たちから尊敬され、職場を統括できる人間性の高い人物であるとされています。そんな杜氏たちが、技術向上、情報交換、相互扶助、そして伝統の継承を目的として設立されています。研鑽し合う同じ流派の人たちのなかでも、鑑評会がおこなわれています。特に在籍人数が多く、伝統と歴史がある南部杜氏組合がおこなう「南部杜氏自醸清酒鑑評会」でトップに輝くのは、全国新酒鑑評会で金賞をとるより難しいことだと言われています。
【一部をご紹介】
- 南部杜氏(なんぶとうじ)自醸清酒鑑評会
- 山内杜氏(さんないとうじ)組合自醸酒鑑評会
- 備中杜氏(びっちゅうとうじ)自醸清酒品評会
- 能登杜氏(のととうじ)自醸清酒品評会
- 広島杜氏組合主催「自醸酒品評会」
- 出雲杜氏(いずもとうじ)自醸清酒品評会
- 小千谷杜氏(おぢやとうじ)組合主催 自醸清酒品評会 など
▲広島杜氏組合主催「自醸酒品評会」での賞状(旭鳳酒造)
雄町サミット
主催:JA全農おかやま、岡山県酒造好適米協議会、岡山県酒造組合
後援:国税庁、岡山県、日本酒造組合中央会、㈱アスク、新中野工業㈱、㈱フジワラテクノアート
雄町サミット(おまちサミット)は、"幻の酒米"と言われる「雄町」の主産地である岡山県の酒米生産者と酒蔵が、「雄町を原料にした日本酒をより多くの方に知ってもらい、好きになってもらいたい」という思いから開催されているイベントです。
酒米・雄町を使った酒のみを出品することができます。岡山県内の酒蔵だけでなく、全国で雄町を使用している酒蔵が毎年出品しています。米に注目が集まり、品質の良さが知れ渡ることによって、農家の意識向上や地域振興、後継者不足の緩和が期待できます。
ワイングラスでおいしい日本酒アワード
主催 :ワイングラスでおいしい日本酒アワード実行委員会
実行委員:コンタツ株式会社/株式会社佐浦/株式会社酒文化研究所/辰馬本家酒造株式会社/人気酒造株式会社/株式会社流通情報企画
協賛:RSN Japan(リーデル・ジャパン)株式会社
後援:日本酒造組合中央会
ワイングラスで日本酒を飲む、という新しいスタイルを提案するアワード。今でこそ広く知られるようになりましたが、2011年のアワード開始時点では、あまり一般的ではありませんでした。日本酒に"ワイングラス"という海外の酒器を用いることにより、日本の伝統的な酒器ではつかみきれなかった新たな日本酒の魅力を再発見することが期待されています。
2024年は、260社が出品。1038点のエントリーのなか、最高金賞55点、金賞267点が選出されました。審査員は研究者など専門家が12名、その他販売店や飲食店など一般審査員が40名です。
燗酒サミット
▲中央の酒が「燗酒コンテスト」で金賞を受賞した
世界で唯一、温めておいしい日本酒を選ぶコンテスト。審査員は、酒造技術者、酒類流通関係者、酒類スクール講師など52名(年により変わる)。
部門は以下の通り。
- お値打ちぬる燗部門:720mLで1,100円(税別)以下、もしくは、1.8Lで2,200円(税別)以下。審査温度は45℃。
- お値打ち熱燗部門:720mLで1,100円(税別)以下、もしくは、1.8Lで2,200円(税別)以下。審査温度は55℃。
- プレミアム燗酒部門:720mLで1,101円(税別)以上、もしくは、1.8Lで2,201円(税別)以上。審査温度は45℃。
- 特殊ぬる燗部門:にごり酒、古酒(常温で3年以上貯蔵されたもの)、樽酒(「樽酒」と表示があるもの)、山廃生酛系など。審査温度は45℃。
【2023年新設されたコンペティション】酒屋大賞
主催:酒屋大賞実行委員会
共催:一般社団法人竹芝エリアマネジメント
後援:国税庁
協力:佐川急便株式会社
審査員が、みんな酒屋であることが特徴です。『酒類販売業免許を有する事業者にて勤務する者 (アルバイト・パートを含む)で、かつ酒屋大賞の趣旨に賛同する者。卸、小売、インポーターの業種や量販店、専門店などの区別には依らない、日本酒を愛するプロフェッショナルとしての厳正な審査を行える者』とされています。
お酒のプロである全国の酒販店員がweb投票で予選をおこない、その後本選は投票結果によって選ばれた20蔵が出品した3種類の日本酒を会場で試飲し投票。「今年一番お薦めの酒蔵」を選出するものです。日本酒の味わいはもちろんのこと、酒蔵の取り組みやコンセプト作りなど姿勢も評価対象になっています。今後「酒屋大賞」は、どのような役割を果たしていくのか?継続していくのか?まだ未知数ですが、新しい切り口のコンペティションで、期待されています。
【2023年新設されたコンペティション】「Japan Women's SAKE Award~美酒コンクール」
主 催:一般社団法人 日本のSAKEとWINEを愛する女性の会
協 賛:株式会社オールアバウトライフマーケティング/株式会社パソナグループ/株式会社サンギ/ANAあきんど株式会社/株式会社小林順蔵商店
後 援:株式会社JTB/株式会社ジェイアール東日本企画/株式会社 ABC Cooking Studio/福井県/国税庁/公益社団法人2025年日本国際博覧会協会
総合コーディネーター:「一般社団法人日本のSAKEとWINEを愛する女性の会」代表の友田晶子氏
アドバイザー:「酒サムライ」コーディーネーター、「一般社団法人ミス日本酒」顧問、「酒蔵ツーリズム推進協議会」常任理事の平出淑恵氏
特別ゲスト:名誉会長・野田聖子議員、各国女性大使
審査員は、すべて酒類関連資格保持者の女性。2023年は80名の女性が審査員をつとめました(私も審査員でした)。他のコンペティションと違う点は他にもあります。純米酒、純米吟醸酒など特定名称酒で部門を分けるのではなく、「フルーティー部門」、「ライト&ドライ部門」、「リッチ&ウマミ部門」、「エイジド部門」、「スパークリング部門」、「ロウ・アルコール部門」と、味わいに関する6部門で区分しています。地域振興も兼ねているため、2023年は東京開催、2024年は福井県開催、2025年は大阪府開催、と審査会場と表彰式会場が移動していくコンテストです。
海外の鑑評会・コンペティション
International Wine Challenge (IWC) イギリス
インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)はイギリス・ロンドンで開催される、世界的なワインコンペティション。1984年に設立された世界的に最も権威あるブラインドテイスティング審査会の一つです。イギリスの出版社ウィリアム・リード・パブリッシングが主催しています。自社の雑誌を通じて広く紹介され、世界中のバイヤーが注目しています。
SAKE部門は2007年に設立されて以来飛躍的に成長し、日本国外で行われる日本酒審査会としては最大かつ最も影響力のあるイベントになっています。部門は、純米酒、純米吟醸酒、純米大吟醸酒、本醸造酒、吟醸酒、大吟醸酒、古酒、普通酒、スパークリング日本酒の9つに分かれています。
Kura Master (フランス)
2017年から開催されているフランスで行うフランス人のための日本酒コンクールです。
審査員はフランス人を中心としたヨーロッパの方々で、フランス国家が最高職人の資格を証明するMOFの保有者をはじめ、フランスの一流ホテルのトップソムリエやバーマン、カービスト またレストラン、ホテル、料理学校関係者など飲食業界のプロフェッショナルで構成されています。2023年の日本酒の総出品数は1110銘柄。2021年度からは本格焼酎・泡盛コンクールを新設されています。
Kura Masterはフランスの歴史的食文化でもある≪食と飲み物の相性≫に重点をおいています。ソムリエたち審査員が日本酒を深く学び、自ら日本酒を正しく伝える知識を得ることを目的として、酒文化研修旅行を2017年から毎年実施されています。研修旅行では受賞蔵を訪問し、酒造りの体験等を通して日本各地の歴史や食文化に造詣を深めるほか、飲食関係者、各県や団体関係者、一般消費者との交流会やセミナーも開催して参ります。
その他のコンテスト
以上のコンテストが、知られている大まかなものです。しかし他にも多くのコンテストがあります。すべては紹介できませんが、一部を紹介します。
- Sake International Awards
- シンガポール酒チャレンジ
- ミラノ酒チャレンジ
- オリエンタル酒アワード[OSA]
- SAKE COMPETITION[SAKE C]
- 全米日本酒歓評会
- Los Angeles International Wine Competition - Sake Category
- U.S. National Sake Appraisal
- Fine Sake Awards Japan
- カタドール
など。他にも多数のコンテストが存在します。
まとめ
このように多くの鑑評会があり、酒蔵は自分たちの技術力を競争によって測っています。各種鑑評会やコンペティションに出品することで、自分たちや普段の市場ではわからない公正な評価を得ることができ、品質評価と向上につながります。また、受賞歴をPRすることで、ブランド価値の向上が期待でき、販売促進と市場拡大が可能になります。高いレベルで競うことで、受賞酒蔵同士の交流やネットワークができるという利点もあります。
受賞を重ねることで、すでにいるその酒のファンが「自分たちの選択は正しかったのだ」と誇ることができるのも魅力のひとつでしょう。
伝統とは、ただ古いものを後世に伝えるだけでなく、古き良いものを現代のニーズに合わせてカスタマイズし、どんどん淘汰され、より良くし、明日に繋げていくものだと思います。鑑評会にはその役割があると思います。信頼性の高い鑑評会の結果を、商品選択のひとつのツールとしてチェックしてみてください。
この記事を書いてくれた日本酒人
関 友美さん

日本の文化や伝統を世界に伝えるライター。日本酒や和食、伝統文化をテーマにした執筆を得意とし、その文章は多くの読者に日本の魅力を伝えています。資格を活かし、日本酒や発酵食品に関する深い知識を持つ関さんは、その専門性を活かして様々なプロジェクトにも携わっています。審査員としての経験から、日本酒の品質や特徴を深く理解し、その魅力を的確に伝える力にも定評のある日本酒界屈指のライターさんです!
【保有資格】
・唎酒師、日本酒品質鑑定士(SSI認定)
・発酵食品ソムリエ
・シードルマスター(シードルマスター協会認定)
【審査員実績】
・MONACO SAKE AWARD 2024
・全国燗酒コンテスト 2024